回帰不連続デザイン

回帰不連続デザインとは

回帰不連続デザイン(Regression Discontinuity Design: RDD)とは、ある連続変数の閾値(cutoff)を境に、介入を受ける確率が不連続に変化する状況を利用して、介入のアウトカムに対する因果効果を推定する方法です。

例: 小児の鉄欠乏性貧血に対する鉄剤投与

例えば、あるガイドラインに、「1歳時点で、Hb<11.0g/dLの鉄欠乏性貧血がある場合、鉄剤の投与を開始する」と記載されていたとします。
このガイドラインが実際の診療に強く影響していれば、Hb 11.0g/dLと10.9g/dLの児では、臨床的な状態は非常に似ているにも関わらず、鉄剤の投与を受ける確率は大きく異なる可能性があります。

そこで、Hb 11.0g/dLという閾値のすぐ上とすぐ下にいる児を比較し、例えば5歳時点での発達をアウトカムとして追跡します。

閾値付近では、鉄剤投与以外のアウトカムに影響する因子が連続的に変化すると仮定できれば、閾値で生じるアウトカムの不連続な変化を利用して、鉄剤投与の因果効果を推定できます。

重要なのは、この方法によって推定されるのは、「すべての鉄欠乏性貧血児における鉄剤の平均的な効果」ではなく、Hb 11g/dLという閾値付近にいる児における局所的な因果効果だという点です。

※画像は説明のために作成しています。データは適当に生成しています。

Running Variable とCutoff

この例におけるHbのように、介入を受けるかどうかをきめる基準となる連続変数をrunning variableと呼びます。

そして、Hb 11.0g/dLのような閾値をcutoffと呼びます。

Sharp RDDとFuzzy RDD

介入がrunning variableんよって完全に決まる場合をsharp regression discontinuity designと呼びます。

例えば

  • Hb <11g/dL かならず鉄剤投与
  • Hb ≧11g/dL 絶対に鉄剤を投与しない

というルールが完全に守られている場合です。

しかし、実臨床でこのようなことはほとんどないでしょう。

Hb 10.8g/dLくらいでも鉄剤を投与されなかったり、その逆に閾値以上のHbでも鉄剤を投与されている児もいると考えられます。

このように、cutoffを境に介入確率は不連続に変化するものの、介入が完全には規定されない場合をfuzzy regression discontinuity designと呼びます。

Fuzzy RDDでは、cutoffを境に生じる介入確率の変化を利用して、instrumental variableの考え方に基づいて介入効果を推定することができます。

Running variableとoutcomeの関係

RDDでは、cutoff以外の場所で、running variableと潜在的アウトカムの関係が滑らかに変化していることが重要です。また、その関係がモデリングで正しく特定されている必要があります。

例えば、Hbと5歳時点の発達に非線形の関係があるにも関わらず、広い範囲のデータに単純な線形モデルを当てはめると、cutoffにおける不連続な変化によって推定される介入効果を誤って推定することになります。

このような事態を防ぐために、cutoff付近の、狭い範囲(bandwidth)のデータを用いて、局所的に関係を推定する方法が一般的です。

bandwidthを狭くすることでrunning variableとoutcomeの関係をより単純な関数形で近似しやすくなり、モデルのmisspecificationによるbiasを抑えやすくなります。一方で、解析に利用できるサンプル数は減り、推定の精度は低下します。そのため、biasとvarianceのトレードオフを考慮してbandwidthを選択する必要があります。

RDDが因果効果を推定するのに必要な条件

RDDによる因果推論では、cutoffにおいて、介入以外のアウトカムに影響する要因が不連続に変化しないことが重要です。

先の例で、例えばHb 11g/dL未満の患者に、鉄剤の投与と同時に栄養プログラムを導入していた場合、鉄剤投与単独の効果は推定できません。

また、患者や医療者がrunning variablew意図的に操作してcutoffのどちら側に入るかを選べる場合にも、cutoff直前直後の対象者が比較可能ではなくなり、RDDによる因果推論が妨げられる可能性があります。

したがってRDDでは、cutoff付近で介入以外の要因が連続的に変化していることや、running variableがcutoff付近で恣意的に操作されていないことを検討することが重要です。

参考文献
Lash TL, VanderWeele TJ, Haneuse S, Rothman KJ. Modern Epidemiology. 4th ed. Wolters Kluwer; 2021.


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